レールスイーパーの用途

当社製品のレールスイーパーには、標準タイプ、アース線付タイプ、フェルトタイプの3種類があります。
標準タイプは、レール表面の異物や粉塵、レールの酸化被膜等を除去する用途で、粉塵がブラシの隙間を通り抜けないように、斜めのスクレーパーが付いているのが特徴です。
アース線付タイプは、主にクレーン本体に帯電した静電気や漏電をアースベルトの付いたブラシからレール(地面)に放電する役割を持っています。
フェルトタイプは、ステンレスブラシの代わりに、フェルトを用いて、レール表面に付着した油分や水分を拭い、車輪のスリップを防ぎます。

標準タイプ
アース線付タイプ
フェルトタイプ

アース線付タイプは、1982年に東京都立工業技術センター(現、東京都立産業技術センター)において、5tの天井走行クレーン実機にセットし、電流波形試験でその接地性能が確認されました。
以来、各業界・業種で使用されるクレーンの帯電防止用として、今日までその役割を果たしてきています。

あるお客様から、帯電防止用のレールスイーパー(アース線付)で落雷対策に応用できないかとのご相談を受け、中部大学工学部 電気電子システム工学科 山本和男教授 監修のもと、疑似的落雷によるレールスイーパー(アース線付)の能力を測定する試験を行いました。
また、それと同時に、1982年に行った電流波形試験の裏付けおよび更新を行うために、低電圧通電試験も行いました。

Ⅰ.レールスイーパー(アース線付)の耐雷試験

試験場所

中部大学 工学部 電気電子システム工学科 高電圧実験室

試験対象物

品名:レールスイーパー小型(アース線付)

目的

雷は高電圧、大電流、大電荷量ですが、落雷による機器の損傷の程度は電荷量(C:クーロン)に比例して大きくなります。よって、電荷量を変化させ、長波尾大電流がレールスイーパー(アース線付)のブラシからレールへ通電した時、ブラシ端面に与える損傷度合いと大地への通電の検証を目的としました。

試験方法

長波尾大電流発生装置を用い、レールスイーパー(アース線付)に長波尾大電流を通電させ、ブラシからレールへの放電の様子とその波形、ブラシ端面の損傷度合いを測定しました。

試験回数は、1 kV充電(6 kA)~4 kV充電(24 kA)の間で各1回、計4回行いました。

試験装置、治具等
長波尾大電流発生装置
レールスイーパーと50㎏Nレール
試験結果
1.1kV充電 : 波高値4.8kA 電荷量46.9 C(クーロン)
放電の様子
入力電流波形
放電後のブラシ端面の様子
2.2kV充電 : 波高値10.2kA 電荷量106.0 C
放電の様子
入力電流波形
放電後のブラシ端面の様子
拡大図
3.3kV充電 : 波高値15.7kA 電荷量169.8 C
放電の様子
入力電流波形
放電後のブラシ端面の様子
拡大図
4.4kV充電 : 波高値21.2kA 電荷量224.4 C
放電の様子
入力電流波形
放電後のブラシ端面の様子
拡大図
考察
(中部大学工学部 電気電子システム工学科 山本和男教授 報告書より引用)

今回、長波尾大電流発生装置を用い、レールスイーパー(アース線付)に長波尾大電流を通電させた。試験結果より電流はブラシから接地へ確実に通電できていることから、レールスイーパーが設置されているクレーンなどに落雷があったとしてもその雷電流を安全に大地に通電できるものと考える。

参考文献(1)に示されている「冬の日本海沿岸に落ちる冬季雷の電荷量累積頻度分布図」には、冬の日本海沿岸に落ちる冬季雷の電荷量累積頻度分布が示されている。冬の雷は夏の雷に比べて電荷量がかなり大きく、高構造物に雷が集中する特性を有しているため、夏の雷よりも危険である。本実験は、夏の雷よりもより条件の厳しい冬の雷にも耐え得るのかを確認するための実験を行っている。今回の試験で最も大きい電荷量である224.4 Cを超える落雷は、冬の雷のおよそ5 %程度である(1)。つまり、今回の試験は冬の雷の95 %の冬の雷に対しても耐え得ることを証明した試験である。ちなみに、試験結果後のブラシの状況を見るとさらに大きな電荷量の雷でも問題なく雷を大地に放出できると考えられる。

参考文献

(1)独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:「風力等自然エネルギー技術研究開発/ 次世代風力発電技術研究開発/ 自然環境対応技術等(落雷保護対策)」,p.34

放電動画

46.9C

106.0C

169.8C

224.4C

Ⅱ.レールスイーパー(アース線付)の低電圧通電試験

試験場所

中部大学 工学部 電気電子システム工学科 山本和男実験室(分室)

試験対象物

品名:レールスイーパー小型(アース線付)

目的

1982年に東京都立工業技術センターにおいて、5tの天井走行クレーン実機にセットし、電流波形試験でその接地性能が確認されました。
そこで、より条件の厳しい低電圧での通電性能を、実験室で再現することにより、レールスイーパー(アース線付)が高電圧から低電圧まで、ブラシからレールを通してグランディング可能であることの検証を目的としました。

試験方法

ファンクションジェネレータ(FG)より入力した電圧をバイポーラ電源により、50 Vに増幅させ、3.3 Ω(10 Ωの抵抗を3つ並列して使用)の抵抗とレールスイーパー(アース線付)の直列接続回路に印加することで通電性能を確認しました。
通電時はおよそ15 Aの電流が流れることとなります。
試験時は、レールスイーパー(アース線付)をキャスターの付いた絶縁物に固定し、絶縁物に付けられたケブラー製ロープをリールで巻き取ることで、レールスイーパー(アース線付)をレールの上を移動させながら試験を行いました。なお、移動速度は1cm/secで、通電時間は30Secとしました。

試験装置、治具等

使用機器詳細

配置図概要

試験装置

試験結果
1.レールスイーパー(アース線付)停止状態での印加(46V、3.3Ω、14A、30Sec)
抵抗間電圧波形
通電電流波形
試験前のブラシ端面の様子
試験後のブラシ端面の様子
2.レールスイーパー(アース線付)移動状態での印加(47V、3.3Ω、14A、30Sec 1cm/Sec)
抵抗間電圧波形
通電電流波形
試験前のブラシ端面の様子
試験後のブラシ端面の様子
考察
(中部大学工学部 電気電子システム工学科 山本和男教授 報告書より引用)

ファンクションジェネレータとバイポーラ電源を用い、レールスイーパー(アース線付)に30s間、約50Vの電圧を印加し、ブラシ部とレール間の通電状況を確認した。その結果、およそ15Aの電流が流れ、通電を確認することができた。

また、本試験結果より、長時間(30s)の15A程度の電流が流れたとしてもブラシ部の大きな性能低下はないことを確認した。

 なお、過去に行った実験で、実際のクレーンを用いた200V系地絡試験時の最大電流がおおよそ20 Aであることが確認されていた。よって、今回の試験では、電源電圧50 Vにより約15Aの電流を通電させる条件で、同等の試験を再現した。また,今回用いたレールには、酸化被膜が付いていることから、ブラシ部とレール間の抵抗はより大きくなる条件下の試験であった。このような条件下でも問題なく通電を確認することができた。

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